内向性・外向性遺伝子情報と日々の対人・環境データ：私にとって心地よい関わり方を見つける実践体験
内向性・外向性遺伝子情報と日々の対人・環境データ：私にとって心地よい関わり方を見つける実践体験
日々の生活の中で、人との関わりに疲れやすさを感じたり、逆に一人でいる時間に孤独を感じたりと、自分の「心地よい関わり方」が分からず、メンタルに波が生じることがありました。特に、仕事でのチームコミュニケーションや、友人との集まりなど、社会的な活動の後に顕著でした。どうすればこの波を穏やかにできるのか、具体的な方法が見つからずにいました。
そんな時、「わたしの個別ケアジャーニー」の存在を知り、遺伝子検査やデータ分析を活用して自分に合ったケアを探求できる可能性に興味を持ちました。特に、自分の性格や傾向が遺伝的にどのように影響されているのかを知ることで、漠然とした悩みがより具体的な理解につながるのではないかと考えました。
遺伝子検査で知った自分の傾向
まず、遺伝子検査を受けました。検査結果の中で特に私の関心を引いたのは、内向性・外向性に関連するとされる遺伝子傾向でした。私の結果は、比較的「内向性」の傾向が強いというものでした。
この結果を受けて、これまでの自分の経験が腑に落ちたように感じました。大人数の集まりでエネルギーを消耗しやすいこと、一人で静かに過ごす時間が回復に不可欠なことなどが、単なる性格ではなく、自身の遺伝的な傾向とも関連している可能性があると知りました。もちろん、遺伝子だけで全てが決まるわけではないと理解していますが、自身の傾向を客観的に捉える一つの手がかりとなりました。
日々の対人・環境データの収集と分析
遺伝子情報だけでは、具体的な行動にはつながりません。そこで、遺伝子検査の結果を参考にしながら、自分にとって心地よい関わり方や環境を見つけるために、日々のデータを収集することにしました。
具体的に記録したのは以下の項目です。
- その日の対人交流の量と質: 会議の時間、参加人数、友人や家族との会話時間、オンラインかオフラインかなど
- 環境: 終日リモートワークか、オフィス出社か、コワーキングスペース利用かなど
- 気分: 1日の終わりに、その日の対人交流や環境を振り返り、気分や疲労度を5段階で評価
- 一人の時間: 意識的に一人で過ごした時間（散歩、読書、趣味など）とその時の気分
これらのデータを、簡単なスプレッドシートとスマートフォンのメモアプリを使って記録しました。約1ヶ月間、継続して記録を続けました。
収集したデータを振り返ってみると、興味深いいくつかのパターンが見えてきました。
- 大人数で長時間の会議に参加した日は、帰宅後の疲労度が高く、気分の落ち込みも見られる傾向があること
- オフィス出社で偶然の立ち話が多い日は、リモートワークで集中できた日に比べて疲労度は高いが、適度な交流があった日の気分は悪くないこと
- 休憩時間や昼休みに意図的に一人で静かに過ごす時間を作った日は、午後の集中力や気分の安定度が高いこと
- 休日に全く人との交流がなかった日は、週明けに少し孤独感を感じやすいこと
遺伝子情報で示された「内向性傾向」に加え、具体的なデータが示すのは、必ずしも全ての対人交流が負担になるわけではなく、量や質、そして環境との組み合わせが重要であるという示唆でした。また、完全に一人を避けすぎても良くないことも分かりました。
データに基づいた具体的なケアの実践
分析結果から、「自分にとって心地よい関わり方」は、完全に一人を避けることでも、常に誰かといることでもなく、「質の高い交流を選び、一人の時間で回復するバランス」にあると仮説を立てました。この仮説に基づき、以下のケアを実践しました。
- 会議参加の調整: 必須ではない大人数会議は、事前にアジェンダを確認し、情報収集が目的であれば議事録で代替できないか検討するようにしました。どうしても参加が必要な場合は、発言の機会を意識的に減らし、傾聴に徹するなど、エネルギー消費を抑える工夫をしました。
- 意図的な一人の時間確保: オフィス出社日でも、休憩時間や昼食時に意識的に一人になれる場所で過ごすようにしました。自宅でのリモートワーク中は、作業の合間に短時間でも散歩に出るなど、物理的に空間を移動して気分転換を図りました。
- 休日の過ごし方: 全く予定を入れない休日ではなく、信頼できる少数の友人との短時間の交流や、家族との穏やかな時間を意識的に持つようにしました。これにより、週明けの孤独感を軽減できることがデータからも確認できました。
- 交流後のケア: エネルギーを消費したと感じる対人交流の後には、好きな音楽を聴く、温かい飲み物を飲む、短い瞑想を行うなど、意識的にリラックスできる時間を取り入れました。
実践を通じた変化と気づき
これらの実践を続けることで、メンタル状態に具体的な変化が現れました。
最も顕著なのは、原因不明の疲労感や気分の落ち込みが減ったことです。自分の内向性傾向を理解し、それに対応する具体的な行動を取ることで、無駄なエネルギー消費を抑えることができたためと考えられます。また、データに基づいた「心地よい関わり方」の実践により、人との交流を過度に恐れることなく、自分にとって必要な交流は大切にできるようになりました。
データ記録と分析の習慣は、自分自身の状態を客観的に捉えるスキルを高めてくれました。漠然とした「疲れた」という感覚を、「どのような状況で疲れるのか」「どのような行動で回復できるのか」という具体的な情報として扱えるようになったのです。これにより、感情に振り回されることなく、論理的に対策を立てることが可能になりました。
うまくいかなかった点としては、当初はデータ収集を忘れてしまったり、分析の時間が取れなかったりすることがありました。そこで、毎日同じ時間に記録するリマインダーを設定したり、週末にまとめて分析する時間を確保したりと、無理なく続けられる方法を模索しました。また、分析も最初は複雑に考えず、単純な項目間の相関を追うことから始め、徐々に深めていきました。
今後の展望と読者へのメッセージ
私の体験は、遺伝子情報が示す傾向と、日々の行動データや感情データを組み合わせることで、抽象的な自己理解が具体的な実践に繋がることを示しています。遺伝子情報はあくまで可能性や傾向を示唆するものであり、それ自体が全てではありません。しかし、自身の感覚や経験と照らし合わせ、データを収集・分析することで、自分だけの最適なケア方法を見つけ出すための強力なヒントになります。
もし、あなたが自身のメンタルヘルスについて悩みを抱えており、遺伝子検査の結果をどう活かせば良いか分からないと感じているのであれば、ぜひ日々のデータ収集から始めてみてください。完璧を目指す必要はありません。どのような時に気分が上がり、どのような時に落ち込むのか。どのような行動や環境が自分に合っているのか。小さなことから記録し、傾向を探るだけでも、きっと新しい発見があるはずです。そして、その発見を基に、自分にとって心地よい「個別ケアジャーニー」を歩み始めていただければ嬉しく思います。