わたしの個別ケアジャーニー

遺伝子傾向と過去の経験データから見つけた:私の建設的な内省実践体験

Tags: 遺伝子, データ分析, 内省, 自己理解, 体験談

なぜ建設的な内省が必要だったか

私はITエンジニアとして働く中で、新しい技術の習得や複雑な問題解決が日常です。こうした環境では、過去の経験、特に失敗から学びを得て次に活かす内省の質が重要になると感じていました。しかし、振り返りを行うたびに、うまくいかなかった点や自分の欠点ばかりに目がいき、必要以上に落ち込んだり、自己否定に繋がったりすることが少なくありませんでした。いわゆる「反芻思考」に陥りやすく、そこから具体的な改善策や前向きな行動に結びつけることが難しいと感じていました。

理論的には内省の重要性は理解していましたが、「どうすれば建設的な、未来に繋がる内省ができるのか」という問いに対する具体的な答えが見つけられずにいました。そんな折、遺伝子検査を受ける機会があり、自身の遺伝子傾向が思考パターンやストレス反応に影響を与える可能性があることを知りました。これは、私の内省の「癖」に何か関係があるのではないかという興味を持ち、遺伝子情報と過去の経験データを組み合わせて、内省の質を改善する試みを始めました。

遺伝子情報の理解と過去の経験データの収集

最初に、手元にあった遺伝子検査の結果を改めて詳細に確認しました。特に、気分調整、ストレス反応、認知機能などに関連するとされる遺伝子(例: COMT、BDNF、セロトニン輸送体関連遺伝子など)の傾向に注目しました。私の結果からは、特定のストレスに対して感受性がやや高い傾向や、過去の出来事を強く記憶に留めやすい傾向が示唆されていました。もちろん、遺伝子傾向が全てを決めるわけではありませんが、これが私の内省の「反芻しやすさ」や「ネガティブな側面に注目しやすい」という特性に何らかの形で影響している可能性を考えました。

次に、過去の経験に関するデータ収集を開始しました。内省の対象となるのは、仕事での成功や失敗、人間関係での出来事、個人的な目標達成や挫折などです。これらの出来事について、以下の項目を記録することにしました。

記録ツールとしては、最初はノートとペンで始めましたが、後から振り返りやすくするためにスプレッドシートに移行しました。特定の出来事に紐づけてこれらの情報を入力していきました。

遺伝子情報と過去の経験データの分析プロセス

データが一定量溜まった段階で、遺伝子傾向と過去の経験データを照らし合わせながら分析を行いました。ここでの目的は、特定の遺伝子傾向が、どのような状況や経験において、どのような感情や思考パターン(特にネガティブな反芻)に結びつきやすいのか、そしてそこからどのように建設的な学びに繋げられるパターンとそうでないパターンがあるのかを見つけることでした。

具体的には、スプレッドシートのデータをソートしたり、簡単なグラフを作成したりして、以下の点を観察しました。

分析は手探りでした。最初は遺伝子情報と個々の出来事を無理やり結びつけようとしてうまくいきませんでしたが、より大きなパターンとして捉え直すことで見えてくるものがありました。例えば、私の場合、特定のストレス反応に関わる遺伝子傾向が示唆する特性と一致するように、予期せぬ失敗や他者からの批判といった出来事の後には、特にネガティブな反芻に陥りやすい傾向がデータからも確認できました。一方で、自分で計画を立てて実行し、たとえ失敗しても原因が明確な場合には、比較的早く学びを見出して次に繋げられているパターンが多いことも分かりました。

建設的な内省に向けた具体的な実践

この分析結果を踏まえ、建設的な内省を習慣化するための具体的な実践方法をいくつか試みました。

  1. 「学び」を必須項目とした記録フォーマットの導入: 失敗や困難な出来事を記録する際、必ず「学び」の項目を設けるようにしました。すぐに学びが見つからなくても、「現時点では分からないが、何か学びがあるはずだ」と意識的に記入スペースを確保しました。これにより、自動的にネガティブな側面に囚われるのではなく、「次へ繋げる」という視点を持つことを促しました。
  2. 成功体験のデータ化と分析: 失敗だけでなく、小さな成功体験も積極的に記録し、どのような要素が成功に繋がったのかを分析しました。私の遺伝子傾向から示唆される「強み」や「得意な状況」と、成功体験のパターンが一致するかを確認することで、自己肯定感を高めつつ、再現性のあるポジティブなパターンを見つけ出すようにしました。
  3. 特定のトリガーに対する意識的な介入: 分析で明らかになった、特定の遺伝子傾向が示唆する特性がネガティブな内省に繋がりやすい状況(予期せぬ失敗、他者からの批判など)においては、反芻思考が始まる前に意識的に記録データを見返したり、「学び」の項目に焦点を当てたりする時間を持つようにしました。
  4. データ可視化の活用: スプレッドシートに溜まったデータをグラフ化し、「ポジティブな内省の割合」「失敗からのリカバリーにかかった時間」などを定期的に確認しました。これにより、抽象的な感覚だけでなく、具体的な変化を数値として捉えることができ、実践のモチベーション維持に繋がりました。

実践の結果と変化

これらの実践を続ける中で、私の内省の質は徐々に変化していきました。以前ほど失敗を引きずることが少なくなり、落ち込みからの回復が早くなったと感じています。また、過去の経験を単なる出来事としてではなく、「未来のためのデータ」として捉える視点が身につきました。

データの上でも、ネガティブな感情を伴う出来事の記録は減少し、記録した失敗体験のうち「学び」の項目が埋まっている割合が増加しました。成功体験の記録を通じて、自身の得意なパターンや、遺伝子傾向からも示唆される特性を活かせる状況を客観的に理解できたことは、自己肯定感の向上にも繋がったと感じています。

最も大きな変化は、内省が苦しいプロセスから、自己理解を深め、成長のための具体的なヒントを得る前向きな時間へと変わってきたことです。

工夫点や乗り越えた課題

データ収集の継続は、やはり最も難しい課題の一つでした。記録を忘れてしまったり、面倒に感じたりすることもありましたが、記録のハードルを下げる(簡単なメモから始める)ことや、記録する項目を最小限に絞ること、そして定期的にデータを見返す習慣をつけることで、モチベーションを維持しました。

また、遺伝子情報と過去の経験データの関連付けは、あくまで相関関係を探るものであり、因果関係を断定することはできません。分析結果を鵜呑みにせず、「あくまで可能性の一つ」として捉え、自分の感覚や実際の変化と照らし合わせながら進めることが重要だと感じました。

今後の展望と読者へのメッセージ

遺伝子情報と過去の経験データを組み合わせた内省の実践は、私にとって自己理解を深め、より建設的に過去から学ぶための有効な手段となりました。特に、抽象的になりがちな「内省」という行為に、データという具体的な視点を加えることで、自身の思考や感情のパターンを客観的に捉えやすくなったと感じています。

この体験が、「過去の経験をどう活かせば良いか分からない」「内省がネガティブになりがち」といった課題を感じている方にとって、遺伝子・データに基づくアプローチの一例として、何かヒントになれば幸いです。重要なのは、遺伝子情報やデータ分析はあくまでツールであり、それらを活用して自分自身のパターンを理解し、より良い方向に向けた具体的な行動に繋げていくプロセスそのものにあると実感しています。

わたしの個別ケアジャーニーを通じて、他の皆さんの多様な実践体験から、さらに新たな学びを得られることを楽しみにしています。