わたしの個別ケアジャーニー

遺伝子検査結果と睡眠ログから見えた:私の最適な睡眠戦略の実践体験

Tags: 遺伝子検査, 睡眠, データ活用, 体験談, メンタルケア

遺伝子情報とデータで取り組む、睡眠改善の旅

私はITエンジニアとして日々パソコンに向き合う時間が長く、仕事の性質上、集中力とクリアな思考が求められます。しかし、以前から睡眠の質に悩んでおり、寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりすることが頻繁にありました。その結果、日中のパフォーマンスが低下し、気分の波も大きくなるなど、メンタル面への影響も無視できませんでした。

様々な睡眠に関する情報を試しましたが、どれも一時的な効果しか感じられず、自分に本当に合った方法を見つけられずにいました。そんな時、「わたしの個別ケアジャーニー」の存在を知り、遺伝子やデータに基づいたアプローチに関心を抱きました。自分の体の特性を知ることで、よりパーソナルな対策が見つかるのではないかと期待したのです。

遺伝子検査から見えた睡眠傾向と最初の仮説

まずは遺伝子検査を受けました。結果レポートには、私が特定の睡眠関連遺伝子において、深い睡眠(徐波睡眠)が得られにくい傾向にある可能性が示されていました。また、体内時計の調整に関わる遺伝子にも、少し特徴的なパターンが見られました。

これらの結果を見たとき、長年の私の睡眠の悩みが、単なる生活習慣の問題だけではなく、生まれ持った体質にも関連している可能性があると分かり、腑に落ちる感覚がありました。同時に、「この体質を踏まえた上で、どのようなアプローチを取れば睡眠の質を改善できるのだろうか」という具体的な問いが生まれました。

ここで立てた最初の仮説は、「深い睡眠が得られにくい体質ならば、まずは睡眠時間を確保し、かつ睡眠前半に深い睡眠を促すような工夫が必要ではないか」というものでした。また、体内時計の特徴から、規則正しい生活リズムを維持することが特に重要になると考えました。

睡眠と行動のデータ収集、そして見えてきた関連性

次に、この仮説を検証するために、日々の睡眠と行動のデータを収集することにしました。使用したのは、睡眠トラッカー機能のあるスマートウォッチと、日々の気分や行動(食事時間、カフェイン摂取時間、運動内容と時間、入浴時間など)を記録するスマートフォンアプリです。

約一ヶ月間、以下のデータを収集しました。

これらのデータを週ごとに集計し、遺伝子検査結果の傾向と照らし合わせながら分析しました。例えば、特定の行動(例: 寝る直前のカフェイン摂取、夜遅い時間の食事、不規則な就寝時間)が、深い睡眠の減少や中途覚醒の増加とどのように関連しているかをグラフなどで可視化しました。

分析を進める中で、いくつかの関連性が見えてきました。特に顕著だったのは、カフェインを午後早い時間帯以降に摂取すると、総睡眠時間に大きな影響はなくても、深い睡眠の時間が短くなる傾向があることでした。また、平日と休日で就寝・起床時間が大きくずれると、その後の数日間、寝つきが悪化し、日中の眠気が強くなることもデータで確認できました。

データに基づいた具体的な睡眠戦略の実践

分析結果に基づき、私は以下の具体的な睡眠戦略を実践することにしました。

  1. カフェイン摂取時間の厳格化: カフェインは午前中のみとし、午後2時以降は摂取しないように徹底しました。
  2. 就寝・起床時間の固定: 平日・休日を問わず、可能な限り同じ時間に寝て起きるように努めました。多少ずれても、1時間以内のずれに留めることを意識しました。
  3. 寝る前のリラックスルーティン導入: 入浴時間を寝る1〜2時間前に固定し、湯温はぬるめ(40度程度)に設定しました。また、寝室ではスマートフォンを触るのをやめ、読書や軽いストレッチを取り入れました。これは、体内時計のリズムを整え、副交感神経を優位にするための工夫です。
  4. 夕食時間の調整: 夕食は寝る3時間前までに済ませるようにしました。

これらの戦略は、私の遺伝子検査結果で示唆された傾向(深い睡眠が得られにくい、体内時計の調整)と、実際のデータ分析で見つかった行動との関連性に基づいています。例えば、カフェイン制限は、深い睡眠を阻害する可能性への対策として、就寝・起床時間の固定は、体内時計を整えるための対策として実施しました。

実践による変化と気づき

この睡眠戦略を2ヶ月ほど継続した結果、睡眠の質に明らかな変化が現れ始めました。

まず、寝つきが以前よりスムーズになりました。また、夜中に目が覚める回数が減り、朝までぐっこうり眠れる日が増えました。スマートウォッチのデータでも、深い睡眠の時間がわずかですが増加傾向を示し、睡眠効率(寝床にいる時間に対する実際に眠っている時間の割合)も向上しました。

最も実感できたのは、日中の変化です。朝起きたときの爽快感が増し、午前中から集中して仕事に取り組めるようになりました。以前は午後になると強烈な眠気に襲われることがありましたが、それも軽減されました。気分の波も穏やかになり、以前よりもポジティブな気持ちで一日を過ごせるようになったと感じています。

もちろん、全ての悩みが完全に解消されたわけではありません。日によってはデータが悪かったり、寝つきが悪かったりすることもあります。しかし、そのような日でも、「これは昨日のあの行動が影響しているのかもしれない」とデータから推測できるようになり、過度に落ち込むことはなくなりました。何が原因かを理解しようとするプロセス自体が、精神的な安定につながっていると感じます。

工夫点と乗り越えた課題、そして学び

この実践を通して感じた工夫点や課題はいくつかあります。

データ収集は継続が重要ですが、毎日手動で記録するのは時に億劫に感じました。そのため、記録項目を必要最低限に絞ったり、記録を忘れても翌日まとめて入力するなど、自分にとって無理のない形で続ける工夫をしました。スマートウォッチのような自動記録ツールは非常に役立ちました。

また、遺伝子検査の結果はあくまで傾向であり、全てが決まるわけではないということを理解することが重要だと感じました。データ分析も同様に、相関関係が見られてもそれが全てではないかもしれません。大切なのは、それらの情報を「仮説を立て、実践し、検証する」ための出発点とすることです。完璧なデータや分析を目指すよりも、まずは行動を変えてみて、その変化を観察するというアプローチが、実践へのハードルを下げてくれました。

この体験を通して得られた最大の学びは、「自分の体について、データを通じて客観的に理解しようとすることの価値」です。漠然とした不調も、データと照らし合わせることで具体的な課題として捉え直すことができます。そして、遺伝子情報という自分だけの特性を踏まえた上で、データに基づいた試行錯誤を繰り返すことで、自分にとって最適なケアが見つかる可能性が高まるということです。

この体験談が、遺伝子情報やデータ活用に興味があるものの、何から始めれば良いか分からない、あるいは実践に踏み出せないでいる方々の、何かのヒントになれば幸いです。