遺伝子検査で見えた私の性格傾向:行動記録に基づいたメンタル負担軽減の実践体験
はじめに:データに基づいたメンタルケアへの関心
私はITエンジニアとして働く中で、日々の業務や人間関係において、漠然とした疲労感や気分の波を感じることがありました。理論的な思考を好む性格から、自分のメンタル状態についても、感覚だけでなくデータに基づいたアプローチで理解し、改善できないかという関心を持つようになりました。
特に注目したのは、遺伝子検査によって生まれ持った体質や傾向が分かるという点です。多くの遺伝子検査サービスで、体質だけでなく、性格傾向や気分の変動に関わる遺伝子の情報も得られると知り、自分のメンタルケアに活用できるのではないかと考えました。
そこで、ある遺伝子検査を受け、その結果から示された私の性格傾向に関する情報と、日々の行動データを掛け合わせて、具体的なメンタルケアを実践してみることにしました。
遺伝子検査結果から見えた私の傾向と行動記録の開始
遺伝子検査の結果には、私が比較的「内向傾向」や「新しい環境への適応に時間がかかる傾向」がある可能性が示されていました。これまでの人生を振り返ってみると、大人数での交流よりも一対一の会話を好む、新しいプロジェクトの立ち上げ時などには特にエネルギーを消耗しやすいなど、確かに心当たりがある部分が多くありました。
一方で、これらの傾向が具体的にどのような状況で、どの程度のメンタル負担に繋がっているのか、感覚だけでは捉えきれていないと感じました。そこで、遺伝子情報で示された傾向を検証し、具体的な対策を立てるために、日々の行動記録を始めることにしました。
記録ツールとしては、スマートフォンのメモアプリとスプレッドシートを併用しました。記録する項目は以下の通りです。
- 行動内容: 今、何をしているか(例: チームミーティング、一人でのコーディング作業、クライアントとのメール、休憩、通勤など)
- 時間: その行動にかけたおおよその時間
- 場所/状況: オンラインかオフラインか、周囲に人がいるか、騒音の有無など
- 気分スコア: 1日の終わりにその日の全体的な気分を10段階で評価
- 疲労度スコア: 1日の終わりにその日の全体的な疲労度を10段階で評価
- 特記事項: 特に気分や疲労度に影響したと感じる出来事(例: 長時間の会議、予期せぬトラブル、新しい人との交流など)
この記録を、まずは1ヶ月間続けることにしました。最初は記録を忘れてしまう日もありましたが、習慣化することで徐々にスムーズに行えるようになりました。
遺伝子情報と行動データの分析、そして具体的な実践へ
1ヶ月間の行動記録データが集まったところで、遺伝子検査結果と照らし合わせながら分析を行いました。スプレッドシートのフィルタリング機能を使い、「気分スコアが低い日」「疲労度スコアが高い日」にどのような行動や状況があったかを洗い出しました。
分析の結果、遺伝子検査で示された「内向傾向」と関連すると思われるパターンがいくつか見えてきました。例えば、
- 連続してオンライン/オフライン問わず、多人数の会議や打ち合わせが続いた日は、特に疲労度が高く、気分スコアが低い傾向が見られました。
- 新しい技術やツールを学ぶなど、慣れない作業に長時間取り組んだ日も、同様に疲労を感じやすいことがデータで確認できました。
- 一方で、一人で集中して特定のタスクに取り組む時間を確保できた日は、気分が安定し、達成感も得やすい傾向が見られました。
- 休憩時間に短い散歩を取り入れた日は、午後の疲労度が軽減されるように見えました。
これらの分析結果から、「内向傾向」を持つ自分にとって、エネルギーを消耗しやすい状況と、回復しやすい状況があることをデータで具体的に把握することができました。このデータに基づき、以下の具体的なメンタルケアを実践することにしました。
- 会議と集中作業のバランス調整: 多人数の会議が連続する日は、その間に必ず15分程度の休憩時間を設けるようにしました。また、可能であれば午前中は集中力の必要な一人作業、午後は比較的交流の多いタスクや会議に充てるなど、タスクの配置を工夫しました。
- 「一人時間」の意図的な確保: 毎日、少なくとも30分は誰とも交流しない、通知も切った状態で過ごす時間を意図的に確保しました。これは読書や軽い運動、趣味の時間に充てました。
- 休憩時間の質の向上: デスクでスマートフォンを見ているだけの休憩ではなく、短い散歩に出る、簡単なストレッチをするなど、心身をリフレッシュできるような休憩を意識しました。
- タスクの細分化: 新しい大きなタスクに取り組む際は、小さなステップに分解し、それぞれのステップで達成感を得られるように工夫しました。これは「新しい環境への適応に時間がかかる傾向」への対応として試しました。
実践による変化と気づき
これらの具体的なケアを2ヶ月ほど継続した結果、いくつかのポジティブな変化を実感しました。最も顕著だったのは、日々の疲労感が軽減され、気分の落ち込みが以前より穏やかになったことです。特に、週の後半にかけて蓄積されていた疲労感が和らぎ、週末をより活動的に過ごせるようになりました。
データで見ても、記録を始める前に比べて、気分スコアと疲労度スコアの変動幅が小さくなり、安定した状態が保たれる日が増えました。特に、意識的に「一人時間」や質の高い休憩を設けた日は、明らかに午後のパフォーマンスや気分が良い傾向が見られました。
この体験から得られた大きな気づきは、「遺伝子で示された傾向は変えられない固定的なものではなく、自己理解を深めるためのヒントである」ということです。そして、「そのヒントと日々の行動データを組み合わせることで、自分にとって最適な行動パターンやケア方法を具体的に見つけ出せる」という点です。抽象的なアドバイスではなく、自分のデータに基づいているからこそ、納得感を持って実践を続けられました。
工夫点と今後の展望
実践を続ける中で、データ記録を継続することが時に負担に感じられることもありました。そこで、記録項目を必要最小限に絞ったり、特定の期間だけ集中的に記録するなど、無理なく続けられる方法を模索しました。また、試したケア方法がすぐに効果を感じられない場合でも、「なぜうまくいかなかったのか」をデータから分析し、別の方法を試すというプロセスを繰り返すことが重要だと感じています。
今後は、さらに特定の状況(例: 締め切り前の忙しい時期、予期せぬトラブル発生時)におけるメンタル状態と行動データを詳細に記録・分析し、よりピンポイントなケア方法を開発していきたいと考えています。
読者の皆様へ
私と同じように、遺伝子検査を受けたものの、その結果を具体的なメンタルケアにどう活かせば良いか分からないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。私の体験はあくまで一例ですが、遺伝子情報で示された「自分らしさ」のヒントと、日々の行動から得られるリアルなデータを組み合わせることで、あなただけの「個別ケアジャーニー」が見つかる可能性があることをお伝えできれば幸いです。
まずは小さなことから、ご自身の気になった傾向と、関連する行動や気分を記録してみることから始めてみてはいかがでしょうか。 ```