わたしの個別ケアジャーニー

遺伝子情報と認知ログデータ分析:私の思考の癖をデータで捉え、修正する実践体験

Tags: 遺伝子, データ分析, 認知, 思考パターン, メンタルケア, 実践体験

はじめに:思考の癖に気づき、データで客観視したいという思い

私は以前から、ある出来事に対して必要以上にネガティブに反応したり、最悪の事態を想像して不安になったりする思考の癖があることに気づいていました。いわゆる「自動思考」と呼ばれる、瞬間的に頭に浮かぶ考えが、気分や行動に大きく影響していると感じていたのです。

自己啓発書などを読む中で、自分の思考パターンを認識し、より現実的でバランスの取れた考え方に変えていく「認知の修正」というアプローチがあることを知りました。しかし、自分の思考はあまりにも無意識的で、どのように捉え、どう修正すれば良いのか、理論は理解できても実践への落とし込みが難しいと感じていました。

そんな時、「わたしの個別ケアジャーニー」の存在を知り、遺伝子情報やデータを活用してメンタルケアを実践されている方々の体験談に触れる機会を得ました。特に、自身の傾向をデータで客観視し、具体的な行動につなげている事例に感銘を受けました。私も自分の思考の癖を、感覚だけでなくデータで捉え、遺伝子の傾向も参考にしながら、より効果的な認知の修正に挑戦してみたいと考えるようになりました。

私の実践:遺伝子情報、認知ログ、そしてデータ分析

私の実践は、以下のステップで進めました。

ステップ1:思考・感情に関連しそうな遺伝子情報の確認

まず、私が持っている遺伝子検査の結果の中で、思考パターンやストレス反応、感情の調整に関連するとされる遺伝子傾向を確認しました。例えば、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の代謝に関連する遺伝子や、ストレス反応に関連する遺伝子などです。

これらの情報から、「私は特定の種類のストレスに対して少し敏感な傾向があるかもしれない」「特定の状況下でネガティブな思考に陥りやすい素地があるかもしれない」といった、自分自身の傾向に関する仮説を持つことができました。ただし、これはあくまで「傾向」であり、思考の癖を決定づけるものではないことを理解しておくことが重要です。この仮説は、後のデータ収集と分析の際の視点として活用しました。

ステップ2:日々の「出来事・感情・思考」ログの収集(認知ログ)

次に、自身の思考の癖をデータとして捉えるために、「認知ログ」の記録を始めました。これは、認知行動療法で用いられる「コラム法」などを参考にしつつ、自分なりにアレンジしたものです。具体的には、以下の3つの要素をセットで記録しました。

  1. 出来事: その時に何が起こったか(客観的な事実のみ)
  2. 感情: その時、どのような感情(不安、イライラ、悲しみなど)がどの程度(0〜100%)生じたか
  3. 思考: その時、頭に浮かんだ考え(自動思考)。特に、感情に影響を与えた考え。

記録は、スマートフォンのメモアプリや、簡単なスプレッドシートアプリを使用しました。なるべく出来事が起きた直後に記録することを心がけました。最初は、自分がどのような状況で、どのような感情や思考が生じるかを把握することを目標としました。

ステップ3:遺伝子情報と認知ログの紐付け・分析

1〜2週間ほど記録が溜まったところで、遺伝子情報で確認した傾向と、収集した認知ログデータを照らし合わせながら分析を始めました。スプレッドシートに記録していたため、感情の強さでソートしたり、特定のキーワード(例:「失敗」「〜べき」「どうしよう」など)でフィルターをかけたりして、パターンを探りました。

分析を通して、以下のようなことが見えてきました。

この分析により、自分の思考の癖が、単なる漠然としたものではなく、特定の状況下で、特定のパターンで現れることがデータとして明確になりました。特に、遺伝子情報で得た仮説が、実際のデータで裏付けられる(あるいは異なる傾向が見られる)ことは、自身の理解を深める上で非常に興味深いものでした。

ステップ4:データに基づいた認知修正の実践

分析で特定した思考パターンに対して、具体的な認知修正の練習を始めました。記録した認知ログを見返しながら、以下の問いを自分に投げかけ、思考を客観的に評価する練習です。

これらの問いに対する回答を認知ログに追記したり、別のシートにまとめたりしました。最初は非常に難しく、自動思考に気づくことすら大変でしたが、記録と分析を続けることで、徐々に自分の思考パターンを「外から見る」感覚が掴めてきました。

遺伝子傾向としてストレス反応しやすい可能性を考慮し、強いネガティブ感情が生じた際には、思考に囚われすぎず、まずは深呼吸をする、軽く体を動かすなど、思考以外の部分に意識を向ける練習も並行して行いました。

実践の結果と変化

この実践を数ヶ月続けた結果、いくつかの変化を感じています。

最も大きな変化は、ネガティブな自動思考に気づく速度が速くなったことです。以前は感情に流されるまま思考に囚われていましたが、今は「あ、今、拡大解釈しているな」「これは証拠のない悲観的な予測だな」といった具合に、思考が発生している瞬間に気づきやすくなりました。

また、気づいた思考に対して、すぐに修正はできなくても、「これは事実ではないかもしれない」「別の捉え方もできるはずだ」と、少し距離を置くことができるようになってきました。これにより、ネガティブ感情が長く続いたり、必要以上に強くなったりすることを多少なりとも抑えられるようになってきたと感じています。

データとして記録・分析したことで、自分の思考の癖が「特定の状況で起こりやすいパターン」であることが腑に落ち、漠然とした「自分はネガティブだ」という自己否定から、「これは私の思考のであり、修正可能なものだ」という捉え方に変わってきたことも、前向きな変化です。遺伝子傾向という「傾向」を知ったことで、自分の反応を客観視する一助になった側面もあります。

工夫点と今後の展望

この実践で工夫したのは、記録を続けるハードルを下げるために、最初は項目を絞り、簡単な形式で記録することから始めた点です。完璧を目指さず、「気づいた時に記録する」というゆるやかなルールにしました。また、スプレッドシートでの分析は、ITエンジニアという職業柄、比較的抵抗なく取り組めましたが、より手軽な分析ツールやアプリがあれば、さらに継続しやすかったかもしれません。

乗り越える必要があった課題は、やはり記録の継続と、思考修正の練習がすぐに効果として現れない時期のモチベーション維持でした。「本当に変われるのだろうか」と疑心暗鬼になることもありましたが、記録データを見返して、ほんの少しでもパターン認識が進んでいることを確認したり、「わたしの個別ケアジャーニー」で他の実践者の体験談を読んだりすることが励みになりました。

今後は、この認知ログの記録と分析をさらに洗練させ、遺伝子情報だけでなく、睡眠時間や食事、活動量などの他のデータとクロス分析することで、思考パターンに影響を与えるさらに多様な要因を特定し、より包括的なアプローチにつなげていきたいと考えています。

私の体験が、遺伝子やデータに基づいてご自身のメンタルケアに取り組もうとされている方、特に思考の癖や認知の偏りに悩まれている方々の、実践へのヒントになれば幸いです。データで自分自身を客観的に捉え、小さなステップから具体的な行動を積み重ねていくことの可能性を、私は自身の体験を通して感じています。