遺伝子検査で見えた私の思考癖：データ記録から見つけたネガティブ思考対策の実践体験
はじめに：ネガティブ思考の波と遺伝子・データへの期待
かつて、私は些細なことでネガティブな思考に囚われやすい傾向がありました。失敗を過度に心配したり、他人の言葉を否定的に解釈したり、最悪のシナリオばかりを考えて不安になったりすることが少なくありませんでした。これらの「思考の癖」は、私の気分を重くし、行動を鈍らせる原因となっていました。
一般的なメンタルケアの方法も試していましたが、一時的な効果はあっても根本的な改善には至らないと感じていました。そんな中、「わたしの個別ケアジャーニー」のような、遺伝子やデータに基づいたアプローチがあることを知り、私の思考パターンに隠された生物学的な背景があるのではないか、そしてそれを理解すれば具体的な対策が見つかるのではないかと期待するようになりました。
遺伝子検査を受けた結果、私の特定の神経伝達物質の代謝に関連する遺伝子タイプに、ストレスに対する反応性や不安傾向に関連する可能性が示唆されていることが分かりました。これは、私が感じていたネガティブ思考の「癖」が、単なる性格の問題ではなく、生まれ持った体質とも関連しているかもしれないという、興味深い示唆を与えてくれました。
しかし、遺伝子検査の結果を見ただけでは、「じゃあ具体的に何をすればいいのか」という疑問が残りました。ここで、遺伝子情報と日々の具体的な行動や思考パターンをデータとして結びつける作業が必要だと考えたのです。
実践：思考の記録とデータ分析で見えた「思考癖」のパターン
遺伝子検査の結果を具体的な対策に落とし込むため、私は日々のネガティブ思考が発生した状況を記録することから始めました。使用したのはスマートフォンの簡単なメモアプリとスプレッドシートです。記録した主な項目は以下の通りです。
- ネガティブ思考が浮かんだ日時
- その時の具体的な状況（誰といたか、どこにいたか、何をしている最中だったか）
- 頭に浮かんだネガティブな思考の内容（例：「自分はダメだ」「きっと失敗する」「嫌われているのではないか」など）
- その時の感情（不安、イライラ、落ち込みなど）と強度（1～10段階）
- その時の体調（疲労度、空腹度、睡眠時間など）
- 前後の出来事（何をきっかけに思考が生まれたか）
この記録を1ヶ月ほど続けた後、スプレッドシートに集約し、データを分析してみました。特定の状況や体調とネガティブ思考の発生頻度や強さの関連性を探るためです。
- 時間帯: 朝や夕方にネガティブ思考が浮かびやすい
- 状況: 未知のタスクに取り組む前、締め切りが近い時、大人数の前で話す必要がある時
- 体調: 睡眠不足や疲労を感じている時、空腹時
- 思考パターン: 特定のキーワード（「もし～なら」「どうせ～だ」など）を含む思考が多い、失敗に対する極端な恐れが根底にある
さらに、遺伝子検査で示された「ストレス反応性に関連する可能性のある遺伝子タイプ」という情報も参照しながら、これらのパターンを解釈しました。例えば、特定の遺伝子タイプが示唆する「ストレスへの高い反応性」が、締め切り前や未知のタスクといったストレス状況下でのネガティブ思考の増幅と関連しているのではないか、といった仮説を立てることができました。
具体的な対策の実践と変化
データ分析で見えてきた「思考癖」のパターンと、遺伝子検査で示唆された傾向に基づき、私は具体的な対策をいくつか試みました。
- 思考の客観視と記録の継続: ネガティブ思考が浮かんだら、すぐにそれに反応するのではなく、「あ、またこの思考パターンだ」と気づき、記録する習慣を続けました。これにより、思考と自分自身を切り離して見ることができるようになり、思考に飲み込まれにくくなりました。
- トリガーへの事前準備: データから、特定の状況（未知のタスク、プレゼン前など）がトリガーとなることが分かったため、事前に準備を徹底したり、深呼吸や簡単なストレッチを取り入れたりすることで、心理的な負荷を軽減するよう努めました。
- 体調管理の最適化: 睡眠不足や疲労がネガティブ思考を増幅させるというデータ結果から、睡眠時間の確保と、作業中のこまめな休憩を意識的に行いました。また、遺伝子検査で示唆された栄養素代謝に関連する可能性のある情報を参考に、特定の栄養素（例えば、ビタミンB群など、神経機能に関わる可能性のあるもの）を意識した食事や、医師や専門家と相談の上でサプリメントの利用も検討しました。
- リフレーミングの実践: 浮かんだネガティブな思考に対して、「本当にそうだろうか」「別の可能性はないか」「この状況から何を学べるか」といった問いかけを行う練習を取り入れました。初めは難しかったのですが、記録した過去の思考パターンを振り返りながら練習することで、徐々に否定的な見方から少し距離を置けるようになりました。
これらの対策を継続した結果、ネガティブ思考が浮かぶ頻度や強度が以前よりも明らかに減少しました。思考に囚われる時間が短くなり、より建設的な考え方に切り替えることができるようになったのです。これは、単に「ポジティブに考えよう」と努力するのではなく、自分の思考のパターンをデータで理解し、遺伝子傾向という自分自身の特性も踏まえた上で、具体的な対策を講じたからこその変化だと感じています。
工夫点、乗り越えた課題、そして今後の展望
データ収集は、最初は面倒に感じることもありましたが、「自分の思考パターンを解明する」というゲーム感覚で捉えることで継続できました。また、遺伝子情報をネガティブに捉えすぎないように、「傾向があるかもしれない」という可能性として受け止め、あくまで自分を知るためのツールとして活用することを意識しました。
今後の展望としては、さらに詳細なデータ（例えば、特定の場所での滞在時間、人間関係アプリの記録など、ITエンジニアらしいデータも活用できるかもしれません）と遺伝子情報を連携させ、より高精度に自分のメンタルパターンを理解し、個別のケア方法を洗練させていきたいと考えています。
私のこの体験談が、遺伝子検査の結果をどう活かせば良いか悩んでいる方や、自分の思考パターンをデータで分析してみたいと考えている方にとって、具体的な実践のヒントとなれば幸いです。遺伝子とデータに基づくアプローチは、自分自身のトリセツを作成するようなものであり、個別最適なメンタルケアへの確かな一歩になると実感しています。