遺伝子情報と日々の記録から見つけた:私の思考整理・問題解決力向上実践体験
思考の混乱から抜け出したい、データで自分を知るきっかけ
私は日々の業務で、複雑な問題に直面することが多くあります。しかし、考えがまとまらず、何から手をつけて良いか分からない、あるいは堂々巡りになってしまうことが悩みでした。特にプレッシャーがかかる状況では、思考の整理に時間がかかり、問題解決のスピードが著しく落ちてしまうのを感じていました。
これまでは一般的な認知行動療法の手法などを試してきましたが、今ひとつ自分にフィットしているという手応えがありませんでした。そこで、何か別の視点からアプローチできないかと考えたとき、仕事で扱っているデータ分析のスキルを自分のメンタルケアに応用してみようと思い立ちました。そして、さらに自分自身の生物学的な傾向を知るために、遺伝子検査にも関心を持つようになりました。「わたしの個別ケアジャーニー」のようなコミュニティの存在を知り、自分と同じようにデータや遺伝子に関心を持つ方々の体験談に触れる中で、これは試す価値があると感じました。
この記事では、私がどのように遺伝子情報と日々の行動データを組み合わせ、思考整理と問題解決能力の向上に取り組んだのか、具体的な実践とその中で見えてきた変化についてお話しします。
遺伝子傾向と日々の記録、具体的な実践プロセス
まず、私は思考や集中力、ストレス反応などに関連する可能性のある遺伝子項目を含む検査を受けました。もちろん、遺伝子情報はあくまで傾向を示すものであり、それが全てを決めるわけではないと理解しています。しかし、自分の生まれ持った傾向を知ることで、日々の体験に新たな視点を与えてくれるのではないかと期待しました。
検査結果で特に注目したのは、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質に関わる遺伝子傾向です。例えば、特定の遺伝子傾向が、新しい情報への適応や集中力の維持に影響を与える可能性があるという情報がありました。
次に、この遺伝子情報を手元に置きつつ、日々の思考パターンや問題解決プロセスに関するデータを収集することにしました。具体的な収集内容は以下の通りです。
- タスク管理ツール: 抱えているタスク、開始・完了時間、タスクの難易度や完了時の感覚(スムーズだったか、苦労したかなど)を記録しました。
- ジャーナリング: 特に思考が混乱した時や、難しい問題に取り組む際に、頭の中で考えていることをそのまま書き出す時間を設けました。後から見返せるように、日付と当時の気分も記録しました。
- 集中時間計測アプリ: 特定のタスクに集中できた時間を計測しました。
- 気分・体調の記録: 日々の気分の波、睡眠時間、食事内容、運動などを簡単なアプリで記録しました。
これらのデータを、まずは1ヶ月間継続して記録しました。その後、記録したデータと遺伝子情報を照らし合わせながら、自分自身の思考パターンや問題解決における癖、そしてどのような状況で思考が整理されやすいのか、あるいは混乱しやすいのかを分析してみました。
例えば、遺伝子傾向で「マルチタスクよりもシングルタスクの方が集中しやすい可能性」が示唆されていたとします。日々のタスク管理ツールのログを見ると、同時に複数のタスクを進めた日は完了率が低く、ジャーナリングの内容も散漫でネガティブな思考が多くなっている傾向が見られました。逆に、一つのタスクに集中できた日は、完了率が高く、ジャーナリングの内容も建設的でした。これは、遺伝子情報が示す傾向が、私の実際の行動データにも表れている可能性を示唆していました。
このような分析結果から、私にとって効果的なアプローチが見えてきました。
- タスクの細分化とシングルタスク化: 複雑な問題や大きなタスクは、可能な限り小さなステップに分解し、一度に一つのステップに集中するようにしました。
- 「思考の書き出し」ルーチン: 特に朝一番や、考えが煮詰まった時に、タイマーを10分セットして、頭の中にある思考や懸念を全て書き出すジャーナリングを習慣にしました。これは、頭の中の情報を「外部に出す」ことで、客観的に眺め、整理するのに役立ちました。
- 集中時間のブロック設定: 集中時間計測アプリを活用し、30〜50分程度の集中ブロックを設定し、その間は他のことに一切手を出さない「シングルタスクタイム」を設けました。遺伝子情報で示唆された時間帯(例:午前中)に試すことから始めました。
- 休憩と環境の見直し: 集中ブロックの間に短い休憩(5〜10分)を取り入れ、休憩中はデジタルデバイスから離れるようにしました。また、日々の気分・体調記録から、特定の環境(例:騒がしい場所、散らかったデスク)で思考が混乱しやすいことが分かったため、作業環境を整理し、集中できる静かな場所を選ぶように工夫しました。
実践を通じた変化と学び
これらの実践を続けるうちに、いくつかの変化が現れました。
まず、思考の混乱が以前よりも軽減されました。特に「思考の書き出し」は、頭の中が整理され、次に何をすべきかが明確になる効果を強く感じました。タスクを細分化し、一つずつ取り組むことで、圧倒される感覚が減り、着実に前に進めているという感覚が得られました。
データ上でも変化が見られました。タスク完了率が向上し、特に複雑な問題に取り組む際の所要時間が短縮される傾向が見られました。集中時間計測アプリのログからは、シングルタスクに取り組む時間が増え、中断が減ったことが確認できました。
この体験を通じて、遺伝子情報と日々の行動データを組み合わせることで、一般的な方法論を自分に合わせてカスタマイズできる可能性を強く感じました。遺伝子情報は、あくまで自分自身の傾向を知るためのヒントであり、決定論的なものではありませんが、具体的な行動データと照らし合わせることで、「なぜ自分はこの状況でこう感じるのか」「どのようなアプローチが自分には合いそうか」といった仮説を立てやすくなります。そして、その仮説を基に実践し、さらにデータを収集して検証するというサイクルを回すことで、自分にとって最適なメンタルケアの方法を見つけていけるのだと学びました。
工夫点、課題、そして今後の展望
データ記録を継続するのは、最初は少し手間だと感じました。習慣化するために、リマインダーを設定したり、記録項目を最小限に絞ったりする工夫が必要でした。また、遺伝子情報やデータ分析の結果を過信せず、あくまで参考として捉え、柔軟にアプローチを試す姿勢が重要だと感じています。うまくいかなかったアプローチもありましたが、それも自分に合わない方法を知るための貴重なデータとして捉え、次に活かすように心がけました。
今後は、さらに長期間のデータを蓄積し、より精緻な分析を行うことにも挑戦したいと考えています。また、他の遺伝子傾向や、食事・睡眠といった他の側面との関連性も深掘りしていくことで、思考整理・問題解決力だけでなく、メンタル全体の健康を高めるための包括的なアプローチを確立していきたいと考えています。
私のこの体験が、遺伝子やデータに基づくメンタルケアに関心を持つ方々にとって、具体的な実践のヒントとなれば幸いです。重要なのは、自分自身の傾向を知り、試行錯誤しながら、自分に合った方法を見つけていくプロセスそのものだと感じています。
もし、遺伝子検査の結果をどう活かせば良いか分からない、具体的な実践方法を知りたいと感じている方がいらっしゃれば、まずは自分自身に関するデータ(気分、行動、環境など)を記録することから始めてみるのはいかがでしょうか。そして、コミュニティで他の人々の体験談に触れることも、きっと新たな気づきを与えてくれるはずです。