遺伝子傾向と情報過多への反応データ:私が見つけたメンタル負担軽減実践体験
導入:情報過多の時代と私の課題
現代社会において、インターネットやスマートフォンを通じて日々膨大な情報に触れることは避けられません。特にIT分野で仕事をしている私は、常に新しい技術動向や情報を追いかける必要があり、それが日常的な情報過多につながっていました。
当初は、単に情報収集の効率が悪い、集中力が続かないといった問題だと考えていました。しかし、情報に触れる時間が増えるほど、漠然とした疲労感や不安感が増し、時には思考がまとまらなくなる感覚に悩まされるようになりました。これは仕事のパフォーマンスにも影響し始めており、何か根本的な対策が必要だと感じていました。
そんな折、「わたしの個別ケアジャーニー」というコミュニティサイトを知り、遺伝子情報や日々のデータを活用したメンタルケアがあることを学びました。自分の内側にある傾向と、実際の行動や状態を結びつけて理解できる可能性に興味を持ち、私の情報過多に対する反応をデータに基づいて分析し、具体的なケア方法を見つける旅を始めることにしました。
遺伝子情報から見えた私の傾向
まず、過去に受けていた遺伝子検査の結果を改めて確認しました。私の結果からは、例えば、特定の環境刺激に対して敏感に反応しやすい傾向や、ドーパミン代謝に関連する遺伝子のタイプなどが示唆されていました。これらは、新しい情報や刺激に対する私の反応パターンと関連がある可能性を示唆していました。
具体的には、COMT遺伝子の特定のタイプが、情報の多い状況でのストレス耐性や集中力の維持に関わると言われています。私の場合は、この遺伝子傾向から、一度に多くの情報を処理することや、頻繁なタスクの切り替えがメンタルに負担をかけやすい可能性があると解釈しました。また、BDNF遺伝子のタイプからは、新しい学習や情報入力が脳の機能維持に重要である一方で、過剰なインプットは逆に疲労を招く可能性も考えられました。
これらの遺伝子情報は、私が「情報過多に圧倒されやすい体質なのかもしれない」という仮説を立てる上での出発点となりました。
行動データ収集と分析
次に、この仮説を検証し、具体的な対策を立てるために、日々の行動データの収集を始めました。収集したデータは以下の通りです。
- 情報接触時間: PCやスマートフォンの利用時間(特定のアプリ利用時間を含む)、メールチェックやSNS閲覧の頻度を記録しました。スマートフォンの画面時間記録機能や、PCの利用時間追跡アプリなどを活用しました。
- タスク切り替え頻度: 1時間の間に異なるタスクをどれだけ切り替えたかを概算で記録しました。
- 集中度と疲労度: 1日の終わりに、その日の集中できた感覚と、情報に触れることによる疲労度を5段階で自己評価しました。
- 気分の記録: 簡単な感情記録アプリで、その日の気分を記録しました。
- 具体的な状況の記録: 情報過多を感じた具体的な状況(例:大量のメール、立て続けのチャット通知、複数のプロジェクト情報同時確認など)と、その時の自分の反応(例:イライラ、集中力の低下、ため息、思考停止)をメモしました。
これらのデータを1ヶ月ほど収集した後、遺伝子情報と照らし合わせながら分析を行いました。簡単な表計算ソフトを使用し、日々の情報接触時間、タスク切り替え頻度と、その日の疲労度や気分の変化との相関関係を確認しました。
分析の結果、私の遺伝子傾向の解釈は裏付けられるように感じました。特に、PCやスマートフォンの利用時間が長時間に及び、かつタスク切り替えが頻繁だった日は、決まって疲労度が高く、集中力が持続しない傾向が見られました。また、特定の時間帯(例えば夕方以降)に情報接触が増えると、翌日に疲労が残ることもデータから読み取れました。これは、私の情報処理能力や回復力が、遺伝子情報で示唆された特性と合致する可能性を示していました。
データに基づく具体的な実践
分析結果に基づき、私は情報過多によるメンタル負担を軽減するための具体的な実践を始めました。
- 情報接触時間の制限と区切り:
- 意図的にPCやスマートフォンの利用時間を制限する試みを始めました。特に業務時間外や休憩時間には、デジタルデバイスから意識的に離れる時間を作りました。
- メールやチャットの確認時間を特定のスロットに限定し、常にリアルタイムで反応することをやめました。例えば、「午前中に1回」「午後に1回」といったようにルールを設けました。
- 通知の最適化:
- スマートフォンの通知設定を見直し、本当に必要なもの以外はオフにしました。特に、頻繁に通知が来るものの、すぐに反応する必要のないアプリ(SNSなど)の通知は停止しました。
- 仕事用のチャットツールでも、全てのチャンネル通知をオンにするのではなく、必要な情報のみ通知が来るように設定を調整しました。
- シングルタスクへの集中:
- 複数のタスクを同時に進めるのではなく、一つのタスクに集中する時間を設けるようにしました。ポモドーロテクニックのような、集中時間と休憩時間を明確に区切る方法も試しました。
- 集中したい時間帯は、可能な限り外部からの情報(メール、チャットなど)を遮断するよう、環境を整えました。
- 「意識的な情報摂取」の実践:
- 漫然と情報を消費するのではなく、「何のためにこの情報に触れるのか」を意識するようにしました。目的意識を持つことで、不要な情報に時間を費やすことを減らせるようになりました。
これらの実践は、最初は意識的に行う必要がありましたが、日々のデータ(特に疲労度や集中度、気分の記録)を継続することで、どの対策が自分にとって効果的かを確認しながら進めることができました。うまくいかない日もありましたが、データを見ることで「今日は〇〇をやりすぎたから疲れたのだな」と客観的に振り返り、翌日以降の行動を調整するヒントにしました。
実践の結果と変化
約2ヶ月間、これらの実践を続けた結果、いくつかの具体的な変化を感じられるようになりました。
まず、情報過多による疲労感が明らかに軽減されました。以前のように夕方になると思考停止してしまうような状態が減り、業務終了後も比較的クリアな頭で過ごせる日が増えました。
また、一つのタスクに集中できる時間が増えたことを実感しています。頻繁な通知やタスク切り替えによる中断が減ったことで、より深い集中が可能になり、結果的に作業効率も向上したと感じています。
気分の波も穏やかになったように感じます。情報に振り回される感覚が減り、自分のペースで物事を進められるようになったことで、漠然とした不安感が軽減されました。
これらの変化は劇的なものではありませんが、日々の記録データからも、実践開始前に比べて疲労度の自己評価が平均的に低下し、集中できた時間の割合が増加している傾向が確認できました。これは、遺伝子情報から推測される自身の情報処理特性に対して、データに基づく具体的な対策が有効であったことを示唆しています。
工夫点と今後の展望
この実践を通して感じた工夫点としては、完璧を目指さないことです。情報過多を完全にゼロにすることは現代社会では不可能であり、また、必要な情報収集まで制限してしまうと本末転倒です。重要なのは、自分にとって「適切な」情報量や接触頻度を見つけることであり、それはデータを通じて自己理解を深めながら調整していくべきだと感じています。
また、日々のデータ記録を継続することは時に負担に感じますが、習慣化のための工夫(例:短い時間で記録を終える、特定のタイミングで行うなど)や、記録ツールの見直しも重要だと感じています。
今後の展望としては、今回見つけた自分にとっての「情報過多対策」を継続するとともに、他の遺伝子傾向や行動データ(例:睡眠データ、運動データなど)と組み合わせることで、さらに多角的な視点からメンタルケアを最適化していきたいと考えています。
私のこの体験が、情報過多に悩んでいる方や、遺伝子・データに基づいたメンタルケアの実践方法を探している方にとって、何かのヒントになれば幸いです。自分自身の傾向を知り、データと向き合い、具体的な行動を変えていくことで、メンタル状態は確実に良い方向へ向かう可能性があると実感しています。