遺伝子情報と食事記録から見つけた:私のメンタルを整える食の実践体験
遺伝子・データから紐解く、私にとっての最適な食事とは
私が遺伝子検査とデータ記録に基づくメンタルケアに関心を持ったのは、日々の気分の波や集中力の低下に悩んでいた時期でした。特に、食事と体調、そして気分の関連性を漠然と感じていましたが、何が原因で、どう改善すれば良いのか、具体的な糸口が見つかりませんでした。様々な情報に触れる中で、「わたしの個別ケアジャーニー」のコンセプトである遺伝子・データに基づくアプローチを知り、科学的な根拠に基づいた自分だけのケア方法を見つけられるのではないか、という期待を抱きました。
遺伝子検査結果とデータ収集:手がかりを探るプロセス
まず、栄養代謝や精神的な傾向に関係するとされる項目が含まれている遺伝子検査を受けました。結果を見ると、特定のビタミンやミネラルの代謝に関わる遺伝子や、カフェインへの感受性に関連する遺伝子に変異があることが分かりました。
例えば、私は葉酸代謝に関連する遺伝子に変異が見られました。これは、葉酸の活性化に効率が悪い可能性を示唆しており、メンタルヘルスとの関連も一部で研究されていることを知りました。また、カフェインの分解速度が比較的遅いという結果も出ました。
これらの遺伝子情報が直接的な原因だと断定はできませんが、自分自身の体質の「手がかり」として捉え、日々のデータと照らし合わせてみる価値があると考えました。
次に、食事内容、食事をした時間、その時の気分(気分の波を10段階で評価)、集中力、そして睡眠時間や運動量を記録する習慣を始めました。市販のスマートフォンアプリを活用し、入力の手間を最小限に抑える工夫をしました。特に食事については、食べたものを具体的に記録するよう心がけました。
実践への落とし込み:仮説検証と試行錯誤
約1ヶ月間データを収集した後、遺伝子検査結果と記録したデータを見比べて分析を行いました。データ分析と言っても、特別なツールを使ったわけではなく、アプリの記録を見返したり、スプレッドシートにまとめてグラフ化してみたりといった、手作業に近い方法です。
すると、いくつかの傾向が見えてきました。例えば、特定の食事パターン(例:朝食を抜いた日、血糖値が急激に上がりやすいと考えられる高糖質な食事を摂った後)で、午後の集中力が著しく低下したり、気分の落ち込みを感じやすい傾向があるように見受けられました。また、カフェインを摂取した日は、夜の寝つきが悪くなるだけでなく、翌日の気分の不安定さが増すような関連性も示唆されました。
遺伝子検査結果で葉酸代謝に関連する変異が見られたことも踏まえ、以下の仮説を立て、具体的な実践に踏み出しました。
- 血糖値の安定化: 血糖値の急激な変動を避けるため、朝食を抜かず、食物繊維やタンパク質を意識した食事を心がける。間食はおにぎりや菓子パンから、ナッツやヨーグルトに変更する。
- カフェイン摂取量の調整: カフェインの代謝が遅い可能性を考慮し、コーヒーの量を減らし、午後はカフェインを避ける。
- 葉酸を含む食品の意識: 葉酸代謝の効率が低い可能性を補うため、ほうれん草やブロッコリーなどの葉物野菜、豆類を意識して食事に取り入れる。
これらの変更を一度にすべて行うのではなく、まずは朝食の質改善から始め、次にカフェイン摂取量の調整、そして葉酸を意識するというように、段階的に取り組みました。それぞれの変更を行った後も、食事、気分、体調の記録は継続しました。
実践から得られた変化と気づき
これらの実践を続けるうちに、少しずつ変化が現れてきました。最も顕著だったのは、午後の強い眠気や集中力の途切れが軽減されたことです。以前は昼食後に急激にパフォーマンスが落ちることが多かったのですが、血糖値の安定を意識した食事にしてからは、比較的安定した状態を維持できるようになりました。
また、カフェインを控えることで、夜の睡眠の質が向上し、それに伴って日中の気分の波も穏やかになったように感じています。データを見返しても、気分の評価値の変動が以前より小さくなっていることが確認できました。葉酸を含む食品を意識的に摂るようになったこととの直接的な関連は定量的に把握しにくいですが、全体的な体調の底上げに繋がっている可能性はあると感じています。
これらの変化は劇的なものではありませんでしたが、私にとっては日々の生活の質を確実に向上させるものでした。自分の遺伝子情報という「体質のヒント」と、日々の行動データという「実際の反応」を組み合わせることで、自分に合った具体的な改善策が見つかるのだということを実感しました。
工夫点と今後の展望
実践を通して難しさを感じたのは、データ記録の継続です。忙しい日や気分が乗らない日は、つい記録を怠ってしまうことがありました。これを乗り越えるために、リマインダー機能を活用したり、「完璧を目指さず、できる範囲で続ける」という気持ちを持つようにしました。また、記録すること自体が自分の状態を客観的に把握する良い機会になる、と意識を変えたことも継続に繋がったと思います。
遺伝子情報やデータを活用したメンタルケアは、あくまで自分自身の体質や傾向を知るための一つの手段であり、そこに記された情報が全てではありません。しかし、漠然とした悩みに対して、具体的なアプローチを考える上での強力なヒントになることを体験しました。
今後は、さらに他のデータ(例えば、スマートウォッチで計測した心拍変動など)と食事や気分のデータを組み合わせて分析することで、よりパーソナライズされたケア方法を見つけられるのではないかと考えています。
この体験が、遺伝子やデータに関心はあるものの、具体的にどう活かせば良いか悩んでいる方の参考になれば幸いです。すぐに大きな変化はなくても、小さな一歩を踏み出し、自身のデータを観察することから、「わたしの個別ケアジャーニー」は始まるのだと思います。